梨木香歩「沼地のある森を抜けて」

著者の「ぐるりのこと」に書かれていたことと地続きになった考え方を感じる内容だった。
副読本に近いものがあるよう。
著者の作品には、何かに対する誠実さというものが感じられる。
対象が、作品なのか、読者なのか、もっと大きな人という括りなのか、はっきりとは分からないけれど。
そういった誠実さは素直に好ましく感じる。
「沼地のある森を抜けて」は、物語を読ませると言うよりも、物語によって自身の考えを表すといった、そんな印象を強く持つ内容だった。
粘菌の話は、非常にナウシカに通じるものがあるなぁと思ったり、鏡原の沼から生まれ、沼に返るという話は、蟲師の生み直しを思い起こさせたりした。
樹枝状結晶で種の説明に使っているところも、蟲師で蟲の説明をしているところと重なるなぁと感じた。
他に何となく心に残ったのは、P.253 食事に栄養の摂取以外の感慨をもつところで不純という言葉が出てきたことに新鮮さを感じた。
も一つ、P.365 の祖母のジョーカーに関する話が理解できずにいる。